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逆転合格を狙わない

 
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受験にまつわる幻想

他の多くの物事と同じように、受験にも様々な幻想があります。

そのうちの一つが追い込まれての大逆転合格です。

部活動引退前までは今ひとつだったけど、引退後に猛然と学習して逆転合格。

そういうコマーシャルも世の中にはあります。

そして現実にそういう受験生は存在します。

しかしそれは2つの点を見逃してはいけない事象です。

1.もともと追い込まれたときに発揮できる実力があっただけ

追い込まれて発揮する、いわゆる火事場の馬鹿力というものがあります。

これは筋力がリミッターを外して動作する状態を指します。

しかし学力にはリミッターがありません。

追い込まれたときに発揮できる学力がなければ、何も起きません。

事前の学習で思考する力や暗記する力、理解する力を蓄えておくから逆転できただけです。

点数として現れない、それでも学習のために役立つ脳を育てている時間があっただけです。

ろくに学習せず、頭も使わないでいた人生が何もないところから高い学力にはたどり着きません。

そもそも学習は習慣で行うものです。

学習の良い習慣が出来上がっていない人間が簡単に習慣を手に入れられることはまれです。

2.当然だがこれはごく少数の人間である

逆転合格のエピソードが流布するのは、そこに夢があるからです。

夢があるということは裏を返せば、頻繁に起こることではないです。

そもそも逆転合格を果たして一気に躍進する生徒の割合は低いです。

ごくありふれたことなら、みなそうやっているので語られることはありません。

寒い夜の晩御飯に鍋料理を食べたというの話が流布することがないのと同類です。

自分が伝説の一部になれると固く信じるならその道を進むのはありです。

しかし合格可能性を高めていきたいと考えるなら、おすすめはしません。

悠然と 鎧袖一触

これは僕の予備校時代の恩師が時折色紙に書いていたという言葉です。

受験とは悠然と、鎧袖一触を以て合格できるようになりなさいと聞かされました。

大逆転を狙うのではなく、ゆとりを持って順調に合格に歩を進めましょう。

試験本番は鎧の袖が一触するだけで相手を倒すように問題を解ける力をつけましょう。

そのために地道な学習を欠かさず、毎日コツコツと基礎を積み上げましょう。

これこそ僕が望む受験の形の一つです。

胃が痛むような受験も味わいがあります。

でもやはり、「うん、そりゃあ君なら合格だわ」という穏やかな受験を迎えてほしいのです。

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