大きな数を素因数分解するコツ 2021
素因数分解の基本
数学の問題を解くときの塾長の思考手順をちょっと解説してみます。
今日は大きな数を素因数分解する手順例です。
素因数分解とはある正の整数を素数(約数を二つだけ持つ整数)の積であらわす方法です。
例えば「6を素因数分解すると2×3」と表記できます。
基本的には、与えられた整数を素数で割っていって考えます。
210であれば、こんな感じです。
- 210÷2=105
- 105÷3=35
- 35÷5=7
- →よって210=2××3×5×7
素因数分解のための基礎知識二つ
これをやるためには、三つの知識があると便利です。
1.素数の暗記
まずは素数の暗記です。
素数は1とその数自身のみを約数とします。
扱う数が素数かどうかは毎回確認しても仕方ありませんから、覚えてしまいましょう。
まずは20までの素数から始めてください。
「2・3・5・7・11・13・17・19」
そう多くありませんよね。
200回も唱えれば覚えられます。
当たり前のお話ですが、素数は以下のルールがあります。
- 偶数の素数は2だけ
- 一の位が5の素数は5だけ
ということで、一の位が1・3・7・9の数だけ確認していけば、大きな素数も探せます。
2.整数が他の整数で割り切れるかの簡単な確認方法
でも、整数がどの数で割り切れるかを全部の素数で実際に計算するのは手間がかかります。
そこで、整数が他の整数で割り切れるかを簡単に確認する方法をいくつか覚えておきましょう。
下の各条件を満たせばそれぞれの倍数ですから、各整数で割り切れます。
- 2の倍数;一の位が0・2・4・6・8いずれか
- 3の倍数;各位の数の和が3の倍数(和が大きくなった時は、もう一度各位の和を取る)
- 4の倍数;下二桁が4の倍数(大きい時は40・80を引いてみる)
- 5の倍数;一の位が0・5のいずれか
- 6の倍数;2の倍数かつ3の倍数
- 7の倍数;3桁ずつに区切って分けた数を一つおきに足したもの同士の差が7の倍数(めったに使わないので「他の倍数でないときに頑張って計算」でもいいです)
- 8の倍数;下三桁が8の倍数(大きい時は40・80を引いてみる)
- 9の倍数;各位の数の和が9の倍数
小学生の算数で学ぶことも多いですので、絶対に身に着けておきましょう。
3.平方数の暗記
ある数を二乗(平方)した数を平方数と呼びます。
これはそのまま因数分解に使うわけではありませんが、後述する「見当をつける」時に役立ちますので覚えておくと便利です。
無論因数分解以外でも役立ちます。
掛け算九九の範囲以外でも、10の倍数の平方は簡単に出せますね。
- 10の平方→100
- 20の平方→400
- 30の平方→900
等のように、十の位の数の平方を100倍するだけです。
また、暗記レベルで言えば11~14の平方は非常によく見かけるので覚えておいてください。
- 11の平方→121
- 12の平方→144
- 13の平方→169
- 14の平方→196
これより大きい数の平方を覚えておいてももちろん構いません。
しかし、ここまでは是非ものです
このほかに15・25・35などの平方も比較的簡単に計算できます。
- 15の平方→225
- 25の平方→625
- 35の平方→1225
これは暗記でも構いませんが、計算でもすぐに出せます。
まずどの数も下二桁が25になっています。
ということは、百の位以上を考えるだけで答えが分かります。
ここで平方する数の十の位に、その数+1をかけてみましょう。
そうすると、求める平方された答えの百の位以上になっていますね。
実際に計算しているのは、この掛け算一回のみと言えるので非常に楽です。
なぜこのようになるのかは中学生なら自力で証明に挑戦して、学校や塾の先生に確認してもらいましょう。
2021を素因数分解する
さて、いよいよ本題です。
今回は大きな数の例として、今年の西暦である2021を使ってみます。
2021を素因数分解せよと言われたらどうやって解きましょうか?
1.まずは知っている素数で割って試す
もちろん手持ちの素数でドンドン割って割り切れるか試しても良いです。
覚えている素数を使い切ったら、さらに大きな素数を探しても良いです。
それが基本としての動作です。
パッと見て分からないからと言って手を止めてしまってはいけません。
まずは自分にできることを一つ一つ試して答えまで一歩ずつ近づくことです。
ここの動作が遅いようでは、ただの怠け者です。
答えを得るために手持ちの武器を使いつくすのが、数学の基本です。
2.倍数の確認をする
ただ、最初から最後まで強引に割るのも芸がありません。
先ほどの倍数確認の手順で「この整数の倍数ではない」と確認できるものがあれば、手間が少し省けます。
今回の2021ではどうでしょうか。
一の位から2の倍数ではありません。
ということは自動的に4・8の倍数も除外です。
もちろん5の倍数でもありませんね。
各位の数の和が5ですから、3の倍数と9の倍数でもありません。
ちょっと筆算して7の倍数ではないことも確認できるでしょう。
ということは今回の2021は、簡単な素数で割り切れるものではないと考えられます。
どうやら二桁の素数の積になりそうです。
3.約数の一の位の数に見当をつける
ここまで塾長も考えて、ちょっと見方を変えることにしました。
やみくもに素数をリストアップして割り算チャレンジも悪くないのですが、もし候補となる素数を絞り込めたらいいなぁ、ということです。
ここで確認したのが一の位です。
一の位が1だということは、扱う素数の一の位が限られるということが想定できます。
掛け算九九で一の位が1になるのは以下の四つ(実質三つ)です。
- 1×1=1
- 3×7==7×3=21
- 9×9=81
これで僅かですが候補を絞ることが出来ました。
もうちょっと範囲を絞ってみましょう。
4.約数の十の位に見当をつける
2021=abという因数分解が出来るとし、a≦bだとします。
これを満たすaの最大値を探してみましょう。
先ほどの平方数の計算を思い出しましょう。
40の平方数40×40=1600、50の平方数が50×50=2500です。
ということは、40×40<2021<50×50だと考えられます。
もう少し絞り込みたいので、45の平方を計算します。
下二桁は25になるんでしたね。
ここで4+1=5ですから、4×5=20がその上の数ですから、45×45=2025です。
ということで、2021にかなり近い数が発見できました。
40台の素数を並べると、41・43・47があります。
先ほどの一の位の見当から、41×41、43×47が候補になります。
41×51では51が3の約数(5+1=6)ですからダメですしね。
そして41×41は40×40=1600にかなり近いので、これもダメでしょう。
もし試してみるならまずは43×47からになります。
もちろんこれを筆算でやっても良いですが、中3の式の因数分解を学習済みならこうしましょう。
43×47=(40+3)(40+7)=1600+400+21=2021
はい、ここに正解がありましたね。
ということで、2021がきれいに素因数分解できました。
いつでも上手くいくものではないですが
このように全ての数がきれいに解けるとは限りません。
平方数を頼りに見当をつけても、それより遠いところに因数があることだってごまんとあります。
大事なのは、いつでもきれいに解けると思うことではありません。
大事なのは、いつでも手持ちの武器を総動員して手と頭を使うことです。
いつでも手を動かす癖をつけておくこと。
すぐに知識が取り出せるように何度も反復しておくこと。
一つ一つの可能性を丁寧につぶす心を持っておくこと。
そういう練習をしておけば、難しい問題がちょっとだけ早く正確に解けます。
そのためには毎日の地道な学習がとても役立ちます。
ある一つの解法で魔法のように解ける問題などを当てにして合格を狙っても面白くありません。
余人の追随を許さぬほど鍛え抜かれたタフな脳を作ることを目指しましょう。
そうするとたまに、魔法のように問題が解けますから。