連立方程式が得意になった生徒の力を伸ばす別解
消去法の基本動作
連立方程式の計算の基本の一つに、消去法があります。
1文字の係数の絶対値を揃えて、加減いずれかで消去して文字数を減らすものです。
このとき、扱う係数の絶対値を極力小さくするのがセオリーです。
$$ x+y=80 $$
$$ 52x+62y=58 \times 80 $$
この2式で連立をするのであれば、下の式全体を2で割って、それに合わせて上の式も揃えます。
$$ 31x+31y=80 \times 31 $$
$$ 26x+31y=58 \times 40 $$
これで上の式から下の式を引けば、ただの一次方程式にできます。
ここで26ではなく31をかけたのは、引き算した後の係数を正に保つためです。
26をかけてxを消去すると、残されたyの係数が負になります。
もちろん柔軟に考えれば、上の式から下の式を引かずに下の式から上の式をひけばいいだけです。
ともあれ、以下のように計算ができます。
$$ 5x=80 \times 31 – 58 \times 40 $$
$$ 5x=40 \times (2 \times 31 -58) $$
$$ x=8 \times (62-58) $$
$$ x=8 \times 4 $$
$$ x=32 $$
途中式を細かく書けばこのような答案です。
一つ書き添えれば、ここでなるべく掛け算をしないでおいたのも工夫です。
そのおかげで、上の途中式2行目のように「共通因数でくくって簡単に計算する」ことに気がつけます。
掛け算が出てきたらすぐに計算してしまうのは、共通因数がみつかりにくくなるもとです。
そもそも計算回数を増やすことは計算ミスの最大の敵です。
係数を小さくすればいいとは限らない
さて、上の答案はあくまで原則で解いたものです。
僕が先だって生徒に見せた答案はまた別のものです。
$$ x+y=80 $$
$$ 52x+62y=58 \times 80 $$
上下の式を観察して以下のことに気がつきます。
・上下の右辺に80が共通していること。
・下の式のxとyの係数の差が10であること。
これらから、下の式には手をつけないで上の式だけ62をかけます。
$$ 62x+62y=62 \times 80 $$
$$ 52x+62y=58 \times 80 $$
この2式の差をとってyの項を消去すると、以下の一次方程式が出ます。
$$ 10x=62 \times 80-58 \times 80 $$
よって以下のように計算できます。
$$ 10x=(62-58) \times 80 $$
$$ x=4 \times 8 $$
$$ x=32 $$
こちらのほうが計算量が減らせているのがわかると思います。
80が上下の式に見えているので、消去後の一次方程式で共通因数がさらに探しやすいです。
さらに、左辺のxの係数が10なので割り算がさらに楽です。
実に小さな計算速度の差ですが、どんどん突き詰めるとここまでできます。
観察しているかが計算速度や正確さの差を生む
大事なのは、計算を無闇矢鱈にしないことです。
式があったらすぐに動かそうというのは、がっつき過ぎです。
意欲は買いますが、伸び悩みのきっかけになりかねません。
計算する前に一呼吸おいて、式をよく観察しましょう。
観察してわかったことがあれば、それがヒントになって答案作りが楽になることがあります。
全ての問題でこううまくいくとはいいません。
しかし、普段から工夫ができないかと観察しておく人だけが工夫することで差がつく問題を勝てます。
上位での戦いとは強引な突破だけに頼るものではないはずです。