センスはいらない
僕の知る優れた凡人たる生徒の話です。
その生徒は物事に挑戦して、初回から成功することはまずない生徒でした。
すこぶる悪いということはないにせよ、大成功を収める様子もありません。
教えたことをその場で把握して使いこなすこともないです。
予習の速度が圧倒的に速いこともないです。
講義授業をしていて、反応がとてもいいということもないです。
しかし、復習のレベルの高さはとびきりでした。
一度教えたことを後に試すと、毎度問題なくスラスラと手を動かしていました。
結果として必ずテストでは良い答案を残し続けて僕の下を巣立っていきました。
当時はあまり分かりませんでしたが、今にして思えばその生徒の臆病さの表裏一体なのでしょう。
新しい知識に臆病さを示し、恐れる。
そして敬意を払って丁寧に復習して身につける。
油断も傲慢も全く縁遠い姿勢の結果が、あの学習なのでしょう。
学習のセンスだの才能だのと嘆いて諦める人は世に多く在ります。
それらを言い訳にして手を止めて復習をおろそかにします。
学習の総量が減って密度が薄くなって、どうやって学力を上げていい点数を取るのでしょうか。
日常の行動一つ一つで学習の総量と密度を高める選択をせずに、どうやって合格するのでしょうか。
合格したいと軽々しく言っても構いません。
ただ、行動が軽いままなのは合格から最も遠い日常です。